2013年6月4日火曜日

エンジニアよ、スタートアップ系ベンチャーの誘いには気をつけろ!

人には色々な価値観があり、それぞれ目指すものも違うでしょう。
それはそれぞれ違う人間なので良いと思います。
今回はいわゆるスタートアップ系のベンチャー企業とエンジニアとの関わり方について、実際にあった話をします。というかつい最近あった話です。

私のチームのエンジニアをとあるスタートアップ系のベンチャー企業の社長が引き抜きにきました。当然、というかそもそも話が噛み合わず話は不成立だったそうですが・・・。




今回のとあるスタートアップ系のベンチャー企業というのは、シードステージでベンチャーキャピタルから出資を受け入れているのかもよくわからないような状態の会社です。確か出資してもらっていたような気がします。スマートフォンアプリケーションの開発を行っていて、一つの自社サービス(アプリ)に特化して開発をしている会社です。
環境としては、もともとが大学発のベンチャー企業らしく、今はアパートの一室で開発者が住居兼事務所として活用して鮨詰めな環境下で活動している会社だそうです。確か前はインキュベーション施設に入っていたはずです。出たんですね。
かなり良い感じにイメージすると・・・


こんな感じですが、実際はかなりカオスです。
私も知人でベンチャー企業経営者がいましたが、古いアパートの一室で3人くらいで鮨詰めで開発しているのを一度だけ覗きに行った事があります。かなりカオスでした。
開発現場というそもそも独特な雰囲気に、不思議な生活感がプラスされて正直2度と立ち寄りたくなくなりました。
ちなみに私が見た光景は・・・

「な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、おれが扉を開けた瞬間に目に飛び込んできたのは右側にパジャマを来た人間がレンジで何かを温めていた。頭がどうにかなりそうだった・・・さらに左側にはパジャマを着た人間が寝転びながらMac Bookを触っていた・・・。さらに障子?を挟んだとなりの部屋では布団で寝ている人間がいた・・・催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・」
(若干ネタが入っております。失礼致しました。しかし全て事実です)

という超カオスでした。
ちなみに伺ったのは土曜日の13時頃だったと思います。

会社がアパートの一室というのは良くある話

話がズレてしまいましたが、
別にエンジニアが実情を理解した上でスタートアップ系ベンチャー企業に参加するのは良いでしょう。
重要なのは、 

自分がどういう条件で、どのような環境下でどんな仕事をすることになるか? 

です。
当然のことながら、スタートアップ系ベンチャーにSESと同程度の金額を支払う事は難しいでしょう。正社員採用ならば条件の低下は尚更です。フリーランスで仮に60万円もらっていた人間も会社の正社員になると、35〜50万円程度になるでしょう。しかしスタートアップ系ベンチャーは会社にお金がないので20万円台というのも当然あり得ます。
(私が知っているベンチャー企業の中にはエンジニアで出来高制という意味不明な会社がありました)
さらに、労働環境も激変します。今までシネマディスプレイを使い、人間工学に基づいた心地の良い椅子で開発していたとしたら、それが13inchのMac Bookのモニターに変わり、椅子もパイプ椅子(まだマシかも)かもしれません。 オフィスルームも広く眺めが良かったところから、アパートの一室で窓無し、鮨詰め状態の息苦しいものに変わるかもしれません。
(品川シーサイドの楽◯さんなんかはお昼ご飯無料ですよね、いいなあ・・・)
そして、仕事内容も変わります。スタートアップ系ベンチャーはお金の関係で複数のポジションのエンジニアを採用する事は出来ないので、ヘタすると一人でインフラ、ネットワーク、開発、テストを担当する事もあるでしょう。デザインもすることになりかねません。労働時間も激変するでしょう。今までは月160時間程度だった稼働が、300時間になったりもします。そういったことを理解した上でチャレンジ出来ますか?
「夢と希望」だけでスタートアップ系のベンチャーに行くのは結構恐いと思います。「思い」だけでなく「現実」をしっかりと見据える必要があります。


提示される条件には気をつけろ

「ストックオプションで・・・」「株をあげる」「IPOで大儲け出来る」という甘い誘いが間違いなく登場します。言葉だけとると怪しい投資話と大差ないですね。中には「うちにくれば成長出来る」「うちはスゴい」というPRも混ぜてくるでしょう。
何故、こういった良い回しが多いのか。単純です。それ以外にPRポイントが無いからです。
ITベンチャーでしかもスタートアップ系ベンチャーだと、自社サービスのダウンロード数(アプリの場合)や、サービスの会員数、PVなど、自社サービスの規模を示す数字しかPRポイントがありません。その会社についてのPRだと、既存メンバーの過去の経歴や人脈を宣伝するしか無いでしょう。あとは取引先でしょうか。
そうすると、スタートアップ系ベンチャー企業というのはどの会社も似たり寄ったりになります。 大きな違いは中の人とメインのサービスだけです。

「うちに来れば成長出来る」という言い回しは・・・

余談ですが、ベンチャー企業の経営者やおエラいさんには「うちに来れば成長出来る」「うちはスゴい」「うちはスピードが早い」という人がかなり多いです。私はこの言い回しははっきり言って嫌いです。何故かというと決まって理由があるからです。大体が稼働が高いからです。そりゃ誰だって

 どこかのIT企業の例:1日  7時間労働⇒月140時間労働⇒年間1680時間
 ベンチャー企業の例:1日14時間労働⇒月280時間労働⇒年間3360時間

人の倍働けば寿命が同じだと仮定すると単純計算で2倍速で成長している事になります。
もちろん量をこなせば成長出来るのかという議論の余地もありますが、それは置いておいて下さい。というわけで大体、「うちに来れば成長出来る」と言っている会社は、高稼働なのです。その企業特有の成長ノウハウが無いのでしたらあまり魅力には映りません。
というわけで本物かどうかは「どういった点が具体的に成長出来るのですか?」だとか「他社と比べてどのような方法で社員の成長を促しているんですか?」と言った感じで具体例を突っ込んで聞いてみると良いだろう。

まとめ

というわけでまとめます。
初めにお伝えしましたが、人はそれぞれ価値観も違いますし、目指すもの様々です。
スタートアップ系ベンチャーを批判するつもりもありません。新しいサービスを生み出そうとする姿勢、素晴らしいと思います。
ただ、気をつけてもらいたい点はあります。

エンジニア側
ちょっとスタートアップ系ベンチャーでバイトをするくらいの感じでしたら良いでしょう。ただ、正式に参画するのであれば、実情をよく理解し労働環境、労働条件等そして家族のことをよーーーーく考えた上で、自己責任で参画するのが良いでしょう。

企業側
若い学生やバイトならば、特に何も気にしませんが、優秀なエンジニアを引き抜く際は、エンジニアの稼働金額の相場観を理解した上で話をして欲しいです。情報の非対称制を利用して情報弱者を騙すようなことは止めて下さい。また、「夢や希望」さらには将来のストックオプションを交渉に持ち出すのも良いですが、一時の誘い文句ではなく言った言葉には責任を持って仕事をして欲しいです。

というわけで終わりです。
ちなみに最後に書きますが、私のチームのエンジニアは初め「休日にちょっとお茶飲まない?」くらいの誘いが来たそうです。Facebookで友達としてつながっていた人だったらしいですが、面倒だったので断りたかったそうですが、あまり面識も無かったので断り辛いし、まあいいかくらいで出向いたそうです。
そしたら自分よりも年下の学生社長にいきなり「◯◯くん」呼ばわりで会社に参加しないかと延々自慢と誘いで、現状もらっている単価を伝えると、完全にエンジニアがもらっている相場観は全くない感じで、「もちろん出来る人には全然払うんだけど、みんな基本は株で〜」といったことを言っていたそうです。(ちなみにすでに手伝っているエンジニアに与えた株はすでに150万円くらいの価値があるそうです・・・ホントか?)まあ遠回しに安い金でとりあえず働いてくれ、という感じです。引き抜きに会った当人曰く「上場しているわけでもない評価のあやしい未公開株なんていらんわ!」と言っていました・・・。

まあ、色々ありますねこの業界・・・。