2013年7月1日月曜日

「どうみてもこれ、同じ案件だよね」ということがよくあるSES界隈の事情



エンジニアのみなさん、SES会社ってどうやってエンジニアを探す営業をしているか知っていますか?

会社によって色々ですが、基本的には
・仲の良いビジネスパートナー会社に電話で「エンジニアいないですかー?」と聞き回る
・今まで名刺交換した企業・担当者にメールでBCCにて一斉配信に展開をして募る

この手段をとります。というかこれくらいしか基本的には方法はありません。
今回はそんなSES会社の営業方法の中でもメールで一斉配信されてくる案件情報のよくある失敗をネタに記事にします。







(あまりにクライアントを特定される恐れがあるため一部加工させて頂きました)





いきなりですが、3つ案件を紹介しました。
ちなみにこれは全部同じ案件です。最近やたらとよく出回っていますね。
(なので私も結構ネタに使っています)
全てエンド直だそうです。見比べてみましょう。するとこういった点がすぐに見受けられます。

・金額に差がある
・必須スキルが違う
・時間幅の記載がないものがある

なぜこのような差が出るのでしょうか。見ていきます。


何故金額に差が出るのか

初めに伝えますが、この案件はクライアントから一次請け企業に支払われる金額は80万円〜95万円となっています。これはわがチームの入念なリサーチにより仕入れた情報なので間違い御座いません。この金額幅は、スキル見合いということでこれだけの幅があります。ちなみに大手SIerなどコアパートナーの場合はこちらの金額の枠外で120万円だとかの高い金額も有り得ますし、そうでなくても提案したエンジニア自体がエキスパートクラス(日本でも有数のクラス)の人の場合はもちろんそれ以上の金額も有り得ます。
ただ基本的には80万円〜95万円なのです。そうすると、クライアントからの支払い金額は基本的には決まっているのに、何故二次請けへの支払い金額にバラつきがあるのでしょうか。回答は単純です。一次請け会社が取っている中間マージンに差があるからです。

各案件にこちらの金額を照らし合わせると

①案件
80万円(クライアントからのmin支払い)―70万円(二次請けへのmin支払い)=10万円(粗利)

②案件
80万円(クライアントからのmin支払い)―67万円(二次請けへのMax支払い)=13万円(minの粗利)
80万円(クライアントからのmin支払い)―60万円(二次請けへのmin支払い)=20万円(Maxの粗利)
粗利幅13万円〜20万円

③案件
95万円(クライアントからのMax支払い)―85万円(二次請けへのMax支払い)=10万円(粗利)


という風に各SES会社がどれだけ儲けているのかがわかります。
大体のSES会社が10万円は利益を取りたいというのがよくわかります。以前、SESのエージェント会社がいくら中間マージンをとっているかブッちゃけてみようでも記載しましたが、大体は5万〜10万円はもらいたいのがよくわかります。この案件はエンド直ということで「俺たちが元請けだ!」ということでデカい顔をしたいので10万円取りたいのでしょう。
ちなみに②案件のSES会社は相当ボッてますね。20万円とかナメてます。エンジニアがかわいそうです。この案件元の会社名晒してやろうかと思うくらいにボッてます。

それで、何故同じ案件なのに会社によって金額に差があるのでしょうか。理由は
・一次請け会社が搾取する中間マージン
・クライアントからの単金に幅がある
の2点にあります。

一次請け会社が搾取する中間マージンについては、上で書いている通りです。管理料が高ければ高いほどエンジニア(または二次請け、三次請け会社)への支払い金額は減ります。
対してクライアントからの単金に幅がある、というのはどういうことでしょうか。ここはSES会社の悪い策略が隠されているところです。
そもそも、クライアントから支払われる金額というのは80万円〜95万円という金額枠で指示が来ています。一次請け会社側からすると、そもそも面談に受かるかもわからないのと、仮にエンジニアが面談に受かったとしても金額がいくらで決まるかもわかりません。95万円で提案したところ、90万円で減額されて決まるかもしれませんし、さらに減額されて80万円になるかもしれません。これはクライアント次第なのです。
あくまで目安があるとすれば、最低限支払い可能の80万円というラインか、または多数の参画実績があるSES会社であれば、経験則で金額感を多少予測ができるかもしれないというところです。

しかし、エンジニアの確保が難しい現在においては、多くのSES会社はなんとかエンジニアを確保したいがために、募集時の金額をMaxの支払い金額に焦点を当ててわざと高く設定します(いわゆる釣りです)。そうすると、情報の非対称性を利用して「あ!この案件の方が金額が高いからこっちにしよう」という情報弱者を釣りにいきます。それで進めて運良く参画が決まって、そのまま条件通りに決まればラッキーといった感じですが、クライアントもバカではないので、Max金額あたりの高い金額での提案に対しては、減額を要求します。そうすると基本的にはまず、二次請け等の下を調整しにいきます。釣られたエンジニアの方の金額を下げようとして、結局は希望通りにはいかないという流れになります。
当然、不満に思うエンジニアもいるでしょう。しかし、案件に「スキル見合い」だとか「Max◯◯万円」といった記述があることで、減額の理由付けがされているので文句も言えないのです。「金額が合わなければNGで構いません」という開き直りともとれるSES会社ですら存在しています。

こういった腹づもりがあるために、SES会社によって金額に差が出ます。
つまり、①、②案件についてはクライアントからの支払い金額をminの80万円であったときに焦点を合わせて金額設定をしており、③案件については金額で条件を釣ってエンジニアを集めるためにMaxの95万円支払いに焦点を当てて設定しています。
こういった理由で金額に差が出るのです。



曖昧な案件には近寄らない方が良い

同じ案件なのに必須スキルがかなり異なっているのと時間幅の記載がないものがあります。
案件①と案件③は大体同じですが、案件②はかなり曖昧です。何故このように差が出るのでしょうか。理由は単純です。営業さんが仕事をしていないからです。

案件情報が曖昧という事は、
 ・情報収集力がない
 ・営業さんの怠慢でテキトーに作成した案件を発信している

の2パターンしかありません。②案件の出元はこの両方ともであると思います。営業さんが仕事をしていない会社の案件で面談に進むと、参画までに進める可能性は低いです。「そんな話聞いてねえよ!」「話が全然違うぞ!」というののオンパレードになるからです。エンジニアからすると、あまりいい気はしません。信用出来ませんよね。
言ってしまえば特殊部隊が全く事前情報のない戦場に放り投げられるようなもんです。いくら屈強な特殊部隊と言えども、事前情報のない戦場に送り込まれると本当に死活問題です。そんな中で生き残れるのは本当の精鋭くらいです。

この②案件の必須スキルを見て、クラサバ系で3年間Java開発をしていた若手がいたとして、「あ!オレでも行けるんだ、ワホー」と思って挑戦したら書類選考ですらスルーされたら、ただの時間の無駄ですし、面談に進んだとしても、「全然話が違うじゃないか!こんなのオレが出来るわけがない!」となると本当に時間の無駄になるからです。そんな営業さんの怠慢で振り回されたくはありません。交通費ももったいないしね・・・。

あなたならばどの案件元のSES会社で進める?


とりあえず②案件は無いでしょう。金額も安いですし案件の情報も少なく、怪し過ぎます。①か③に絞られます。③案件は一見必須スキルを明確にしていて親切に感じます。金額も高いです。本記事の情報無しで比較した場合は、③案件の案件元が絶対に良いでしょう。
しかし、現実的には①案件が良いです。
③案件ですと、Max金額で釣っているため、だいたいどこのSES会社、エンジニアもMax金額に合わせて提案してくるため、クライアントへの提案金額が自然と高く、スキルに見合わない提案金額となり、現実的には参画が決まらない可能性が高い、もしくは回答でOKが出るものの金額で折り合いがつかず揉める可能性がある、ということです。

同じようなことをしているSES会社ですが、結構各社特色があります。
皆さんも悪いSES会社に騙されないように、少ない情報の中で動く事になりますが、気をつけていきましょう。