2013年5月6日月曜日

メーカーの組み込み案件に長くいるエンジニアは使いモノにならなくなる可能性がある

メーカー系C言語案件を持っているSES会社は強みはある
について、補足で記事を書きます。

メーカーの組み込み系案件について事業者側、営業サイドでは良い面を書きましたが、良くない点もありますので書きます。

今回も私が実際に目にしてきた話になります。

メーカー系の組み込み系案件は、
 ・金額等条件が良い
 ・ 案件の継続率が高い
という特徴がありました。しかし、クローズドな案件である点が強烈な弊害を起こしております。一つずつ見て行きます。

1.クローズドな案件のため、汎用性の低い固有の技術が多い

これが一番大きいマイナスポイントだと思います。
一つ例を挙げます。
私の知人のフリーランスのJavaエンジニアは、これまでWeb系のJava案件に取り組んでいましたが、 たまたま依頼されて入った現場がF社系のメーカーの案件でした。
面談時に、「Javaでの公共向けのシステム開発でstrutsを用いるが、DBはF製のSymfowareを使う」と案件説明があったそうです。「Symfoware」????あんまり聞き慣れないな、と思ったそうですが、まあ問題無いだろうと現場に入った所、随所にかなりF社固有のものがあり、そのエンジニアは

「オープンなWeb開発が主流になりつつある時代に、こんなF社固有の技術ばかりの現場に長くいても、それこそスキル的に役に立たない。こんな現場で得られる知識・技術なんてよっぽどのF社系の大規模案件でない限りどうしようもないよ・・・」

と嘆いていました。
少し整理します。別に固有の技術ばかりが使われている現場が悪い(F社が悪い)と言っているわけではありません。上記のような話はメーカーの組み込み案件ではよくある例だと思います。Web開発案件と違って現場特有の固有技術を用いた開発が多いのです。こういった公共系の大規模案件の場合、ずっとこの現場もしくはF社製の現場に長くいれば、この経験も役に立つでしょう。
しかし、F社がずっとこのエンジニアを使ってくれる保証はあるでしょうか?
はっきり言います。ないです。これはフリーランスであろうが会社員であろうが同じです。
あくまで例ですが、F社の経営が悪化し破綻したら雇ってくれません。最悪2度とSymfowareは登場しなくなるかもしれません。予算の関係で現場要員の削減になっても同様です。F社が案件を失注しても同じです。
となると、固有の技術はリスクが高いのです。一度その現場から出てしまうと、固有の技術はあくまで固有の技術なのでオープンな市場から見るとマイナーな技術に様変わりしてしまいます。

仮にF社にずっといて、比較的オープンな現場の面談に進んだとしたら、こんなやり取りがされる可能性大です。

面談者  :DBは何が得意ですか?
エンジニア:ずっとF社の現場にいたのでSymfowareが得意です。
面談者  :・・・Symfowareって何ですか?
エンジニア:F社製のDBです。
面談者  :うちはMySQLがメインですが、パフォーマンスチューニングとか不可分散は
      大丈夫ですか?
エンジニア:はい、F社の仕様書通りにやってきましたので、大丈夫です。
面談者  :・・・わかりました(なんだ?仕様書って。うーん大丈夫だと言っているけど、
      Symfowareとか聞いた事無いし、用いた経験無いならちょっと危なそうだな。)

といった感じで、F社系の案件に入らない限りイラネなエンジニアになってしまいます。





2.クローズドな案件のため年配者が多く閉鎖的になる

1番に近いところではあります。
前の記事でありますように、クローズドなメーカーの組み込み系案件を持っているSES会社は古くからの会社が多いです。古くからSES会社は年齢層が高めの事が多いです。とすると必然的に周りの外注エンジニアは年齢層が高めになります。

知っているメーカーの組み込み系現場では最年少が43歳くらいでした。
一番年長は50歳代だったはずです(確かリーダーのポジションの人)。驚きました。
ここで「年配のエンジニアは使えない?」という議論をするつもりは一切ありません。
閉鎖的になる弊害というのは、仕事の仕方が閉鎖的になるということです。
年配のエンジニアで最新の技術にキャッチアップしている人というのはあまり見かけた事がありません。特に会社員のエンジニアはその傾向が如実です。プロジェクトの進め方についても昔からの管理方法で進めています(これはまさに「うちはこういうやり方だから」と無理に最新の管理手法を取り入れて変える必要が無く、今まで通り進めてしまうからです)。
開発言語にしても、例えばJavaにしてもある程度のところは過去の経験で多少出来ますが、結局きちんと向き合わないためコアなところがわからず製造段階では使い物になりません(それでもクローズドな案件のため、きちんと出来るとクライアントから思われるのがより悪循環を生みます)。



こういった理由で弊害があります。

この弊害は、ずっと同じ現場に入れ続ければ表面化することもないでしょう。
クローズド案件にずっといたエンジニアは、クローズドなエンジニアになってしまうのです。
ただ、なんらかの理由で現場を出る事になり、さらにはオープンな市場に出てくる事になったときが悲惨です。突然市場が変わるので、これまでのベテランのメーカーの組み込み系技術者から一転して下手すると使い物にならないエンジニアの烙印を押されることになりかねません。

怖いですね。
自分の行っている仕事が、固有の技術・知識なのか、それともどこででも通用する技術・知識なのかということは常に気を配る必要があると思います。
当然、自分が持っている技術・知識がこの先も通用するものであるかなど、誰にもわかりません。だからこそ、これまでの経験で自信があるモノに関しては、より深みを持てるように探求し、さらには最新技術についてもキャッチアップしていくのがこの先も生き残って行くために必要なんじゃないのかな、と思います。