2013年6月12日水曜日

フリーランスになる前に見てもらいたい10のこと


 「なんとなく・・・」
「そのときのいきおいで・・・」

おそらく、フリーランスとして活動を開始したエンジニアの中でもっとも多いのは、この二つではないであろうか。
それ以外では、
「お金が良さそうだから」とか「自由に案件を選べるから」という感じではないだろうか。
 かく言う私自身も本当にその当時を振り返ると、「なんとなく・・・」というのがフリーランスになった理由だ。色々と動機付けは簡単であるがまさに「なんとなく・・・」から始まって今に至っている。

得意な言語や、年齢、希望金額で仕事の有無はかなり違うがそれでも今の時代は過ごしやすい時代ではないだろうか。最近でも前に神保町の案件にいた知人のエンジニアが、同じ時期に神保町の案件にいた若手が2名フリーランスに転向したと話していた。ノマドという言葉が出てくるくらいで正社員サイコーな時代ではなくなったので、それもいいんじゃないかなと個人的に思いを巡らせた。

今回はそんなフリーランスになる前に是非みておいてもらいたいことを書いてみる。
「こんなはずじゃなかった!!」とならないように気をつけて欲しい気持ちと、この先もやっていけるようにというエールも込めて記事にする。



なぜフリーランスになろうと思ったか

これは自身の動機付けとして気持ちの整理と今後のモチベーションを保つためにも必ず確認して欲しい。 何故かというと、この先厳しい世界が待っているのと同時に優秀な人材であれば、多くの引き抜きの誘いが予想されるからだ。
引き抜きの有名どころで言えば、◯イバーエージェントは昔から外注を正社員へと引き抜きしているのは業界では有名な話だ。
フリーランスになった動機が「なんとなく・・・」というのであれば、それも良いだろう。ただ、その企業が◯イバーエージェントのようにそれなりの規模の企業ならばよいが、中小企業もあれば、ベンチャーからも声がかかる事があるので、ブレないようにして欲しい。

スキルシートを用意する

今までは会社が自身のスキルシートを管理していた場合がほとんどであろう。
今後、これがあなたのプレゼンテーション資料であり、魂となるので、スキルシートの認識でも書いたように、もう一度自身のスキルシートを見直す、または作り直し、これまでの現場経験をもう一度振り返ろう。
仮にどこかのエージェント会社に登録して仕事をもらう場合は、当然スキルシートの提出を求められるので、土壇場での作成とならないように前もって作成しておくのが良い。「スキルが読みにくい」というスキルシートの書き方の問題でNGになったらとんだチャンスロスだ。

自分の強みを考える

「自分を知る事」と同義である。何故自分の強みを考える必要があるのであろうか。
それは、自分のエンジニアとしての価値を決める事と同じであるからだ。強みがないのであれば、フリーランスにならない方が良い。むしろそれでフリーランスになってしまうと、30代くらいまではなんとかなるが強みがないので40代に入ってくると単価が下がり始めるのと、参画出来る案件に制限が出始める。あくまで例えであるが、「お肉屋さん」よりも「国産牛がおいしいお肉屋さん」や「和牛が安く手に入るお肉屋さん」といった様に強みを強調出来る方が、訴求効果が高い。逆にどこにでもいるようなエンジニアだと、誰でもいいわけだから、淘汰されやすくなる。

自分の希望金額を決める

とても重要な点である。「自分の強みを考える」を踏まえた上でいくらが良いか決めてみる。 最初は単純に思った通りに決めてみるのも良いであろう。あくまで自分の目標としてでも良い。しかし気を付けてもらいたいのは、数万円程度であれば、調整は可能であるが、あくまでエンジニア自身の金額を決めるのは市場であること、これを忘れないで欲しい。決めた金額に徹底して固辞しているとチャンスロスにつながる。


相場感を知る



「相場観を知る」というのが一番知っておいてもらいたいことであろう。何の「相場観」?というとエンジニアがもらえる金額のことだ。「相場観を知る」ということはつまり情報を収集するということだ。エンジニアの中にはこれが疎い人がかなり多い。エンジニア派遣の会社の営業さんからでも構わないし、既にフリーランスで活動しているエンジニアでも良い。出来るだけ多くの人から情報を得よう。そうすれば、自ずと自分が得られる金額感が形成される。
逆にもらえる金額の「相場観を知らない」とどうなるのかというと、

 ・安く買い叩かれる
 ・高過ぎて干される

この2パターンだ。
安く買い叩かれる」はSES会社がその分ガッポリ儲けるという構図である。あまり気持ちのよいものではない。
「高過ぎて干される」というのは、明らかに相場よりも希望金額が高いため、見合う案件が無いということだ。仮に営業さんに金額が相場よりも高すぎて案件がなくて、金額を下げないと無理だと言われても「相場観のない人」というのは大抵ビジネス感覚に欠けているため、臨機応変に値段を下げるような調整をせず、「この営業はウソをついてオレの単金を下げようとしている」といった思い込みで他を探そうとする。そうすると高過ぎて案件がないので周りから相手にされなくなるか、そのうちどんどん待機期間が長くなり結局ブランクとなってしまい、干されてしまう。

仕事を得るルートを考える

これもとても大事だ。というかこれを考えずにフリーランスになるのは危険である。基本的には下の3パターンに集約される。

 ・知人のツテコネをたどり紹介してもらう
 ・エージェント会社に登録する
 ・前いた会社のパートナー的な位置に下る

「知人のツテコネをたどり紹介してもらう」はフリーランスになりたての人が一番多いルートだと思う。大体始めはみんなこのタイプではないだろうか。ただ、その知人から紹介された案件なのかSES会社なのかは色々であるが、その先がどのようなところなのかでかなりアタリハズレが分かれる。商流が深い案件ばかりの会社だと、当然金額が安い。正社員と大差ない金額になってしまう。
逆に運よく商流が浅く、良い案件だと金額も良くなる。その紹介された先がアタリなのかハズレなのかはまさに「相場観を知る」ことで情報を得ていれば判断出来る。なので、「相場観を知る」ことで自分を守って行こう。

「エージェント会社に登録する」のも良いだろう。◯バレジーズさんや、◯インキャリーさん、最近では◯ーSTARさんなんかが立派なサイトを設けてフリーランスエンジニアを募集している。おそらくてっとり早く案件にたどりつきたければこういったエージェント会社を使うのが一番早いと思う。 JavaやPHPのエンジニアだったら、◯フトバンクさんやR天さんにスライド式のように紹介してくれるであろう。◯ーSTARさんだと◯イバーエージェント系ではないだろうか。
ただ、あくまで私の経験ではあるが、エージェント会社は、営業会社みたいなもので、仕事の仕方が雑な場合が多い。上に出したエージェント会社さんも、どれも設立若く、社員さんも若いので、基本的なビジネス感覚がズレている人が多い。(見かけだけで判断して申し訳ないが、某企業はキャバ嬢かギャル男みたいな人が多かった・・・二度と関わりたくないと思った。)信頼出来そうな担当さんと知り合うには苦労するかもしれない(ヘタすると担当制ではない可能性もある)。

「前にいた会社のパートナー的な位置に下る」というのも意外と多い。簡単に言うと前は正社員でいたのに外注になって再び同じ社内(もしくは現場)で稼働するということだ。まあ以前よりもらえる金額は高くなるだろう。しかしあまりフリーランスになった意味は見いだし難いかもしれない。実はこの「前にいた会社のパートナー的な位置に下る」というのは結構多い例だ。◯クセンチュアさんにいた人たちは典型例とも言えるくらいこの例の気がする。◯ックツリーキャピタルさんなんかはまさに典型で良く言えばいわゆるサブコンという位置になる。Webコンサル系の◯ロムスクラッチさんなんかもこれに近いであろう。◯クセンチュア出身者の人たちはex-acというネットワークがあるおかげも強いのかもしれない。

何にせよネットワークを形成出来ている人はこれまでのツテコネや以前の会社を頼るというのもありであろう。そういうツテコネは使わず1からネットワークを作りたい人だったら、手っ取り早く仕事に就けるエージェント会社を踏み台に使うのも良いかもしれない。

将来的なキャリアビジョンを考える

意外と考えていない人が多い。
あんまり考えていないと クラサバ系40代エンジニアに告げるのように、40代になってから「単価が高いから」とかわけわかんないことを言いながら未経験でも応募可能なWebアプリケーション開発案件を求めることになる。
もちろん、最初に決めたキャリアビジョンと年を重ねるごとにズレていって当然だと思う。もともと私は個人的にそういう業界だと思っている。今はJavaが流行っているが次に何が流行りだすかなどわからないからだ。
ただ、40代に入っても仕事を得られるように常に最新技術についてはキャッチアップしているか、もしくは特定の分野で圧倒的な優位性を持てるようにしないといけない。そうでなければさっさとサラリーマンに戻った方が良い。

将来的なライフスタイルを考える

これもちゃんと考えておこう。
フリーランスなので当然退職金はない。年金厚生年金基金ではなく国民年金なので安い。
となると全部自分で将来のライフスタイルを考えないといけない。そもそも60歳まで現役でいけるかについても議論になる。となると自分で確定拠出年金やら生命保険会社がよくやっている変額個人年金やらで運用していかないと老後の生活はかなり不安だ。
そういう面もあるのをわかっておいて欲しい。
ちなみに家を買おうと思っている人は、サラリーマンではないのでちょいと一手間かかる。

貯金を確認する 

フリーランスになるときは必須だ。
何故かというと支払いサイトという壁が登場するからだ。最短でも月末締めの翌月末日支払いなので、30日後になる。ただ、この支払いサイトで払ってくれるところはあまりない。クライアントは個人事業主との直契約はあまりしないからだ。となると大抵の場合は、クライアントから仕事をもらっている企業に支払いサイト30日で支払われてそこから5日後だとか10日後で自分に支払われる。つまり支払いサイト35日とか40日になる。当月末締めの翌月末日支払いなどかなり良い方だ。当月末締めの翌々月15日支払いや20日支払いもザラにある。お金をもらえるのがだいぶん先になるのだ。
そうなると、最短の支払いサイト30日でも

稼働が決まった月分生活費+翌月分の生活費=2ヶ月分の生活費

を確保していないとお金がショートしてしまう。 支払いサイト50日の案件だと、ほぼ3ヶ月分の生活費を事前に用意しておかないといけない。ヘタすると黒字倒産の危機だ。案件への参画が決まらなければ、この期間さえもさらに先送りになる。こうならないように、事前に生活費の余裕があるかを確認しておこう。
ただ、エージェント会社の中にはそういった支払いサイトについてエンジニアに優しい会社も稀にある。◯クロネットさんなんかはフリーランスエンジニアには確か支払いサイト25日(当月末締めの翌月25日支払い)だったはずだ(お願いするときは確認してね)。ピンチのときはとりあえず、契約先に相談してみるのも良いであろう。本来の支払いサイトよりも先出に応じてくれる会社は結構あるもんだ。

覚悟はあるか

これまでの9つのことを見て、あとは個人でやっていける自身があるかないかの決心をするだけだ。無いならきっぱり諦めよう。
個人的には絶対に一度はフリーランスで働いてみた方が良いと思う。私なんかは今まで雇われているくせに自分の会社の文句ばかりを言っていたが、辞めてみてサラリーマンで良かった面、その会社の良かった面が見えてきた(逆に悪かった面もよく確認出来た)。エンジニアであれば、今の環境下であればフリーランスになってもサラリーマンに戻りやすいであろう。失敗はきくという事だ。ただ、そんな甘い考えではなく、高単価を得られ続けられるように、強い意志と弛まぬ自己研鑽でフリーランス街道を突き進んで欲しい。

終わり

というわけで「フリーランスになる前にみてもらいたい10のこと」をお送りした。

まったくの余談ではあるが、トップ画像にある道頓堀へのダイブは一時の感情の昂りで飛び込んだは良いものの、その後は悲惨な状態になることを是非、知っておいて欲しい。なんでも飛び込むまでは祭り上げられるが、飛び込んだあとは臭いは強烈で服は濡れているわで、周囲は近寄らないで欲しいので煙たがるし、シャワーやお風呂、そして着替えの用意がないととんでもない目にあい(最悪入店拒否らしい)、悲惨な帰宅までの経路となるそうだ。

フリーランスになるときも、そういった「勢いで・・・」や「なんとなく・・・」という人は結構いる。ただ、私が知っている限り生き残っていけている人は始めはそういった先走った感じでフリーランスになっても、少しずつ軌道修正を加えていって、みんな立派にやっている。 運もあったのかもしれないが、以前からフリーランスで勝負したいという気があったのかもしれない。
正社員、フリーランスどちらも良い点はあると思う。どちらの生き方であれ冷静に判断して悔いが残らないように生きて欲しい。